お腹に体重の25%ものフンを溜めながら、全力でダッシュしてナンパする根性。
南米に生息するサソリ(Ananteris属)には、トカゲのように尻尾を切って敵から逃げる「自切」という能力があります。しかし、サソリにとってこれは命がけの決断です。なぜなら、彼らの肛門は尻尾の先近くにあるため、尻尾を失うことは「二度とウンチができなくなる」ことを意味するからです。便秘になり、体内にフンが溜まり続ける彼らに、果たして恋をする余裕なんてあるのでしょうか?
研究チームは、尻尾を切って便秘状態になったオスのサソリを観察し、その身体能力や求愛行動がどう変化するかを調査しました。便秘が進むと、体重は最大で25%も増加します。これは人間で言えば、お腹に20kg近い便が溜まっているのと同じ状態です。
常識的に考えれば動くのも辛いはずですが、驚くべきことに、便秘のサソリたちの走る速度は全く落ちていませんでした。それどころか、メスへの求愛行動も健康なサソリと同じように積極的に行い、交尾に成功して子孫を残すことさえできたのです。彼らは尻尾を失ってから死ぬまでの数ヶ月間、便秘の苦しみに耐えながら、最後の命を燃やして恋をしていました。
究極の便秘状態でも、種の保存という本能は揺らぎませんでした。尻尾を犠牲にして生き延びた彼らは、その残された短い時間を、ただひたすらに次世代へ命を繋ぐために使っていたのです。サソリの「死ぬ気の恋」に、生命の力強さを感じずにはいられません。