腐った卵より、ミントより、わさびの「ツーン」が最強の目覚ましだった。
火災報知器の「ジリリリ!」という警報音は、聴覚に障害がある人や、深い眠りについている高齢者には届かないことがあります。音や光に頼らず、確実に危険を知らせる方法はないか?研究チームが目をつけたのは、人間の五感の中で最も原始的と言われる「嗅覚」でした。
彼らは、腐った卵、ミント、焦げた臭いなど、様々な強烈な臭いをテストしました。眠っている人を叩き起こすには、単に「臭い」だけでなく、本能的な危機感を刺激する必要があります。数々の実験の末にたどり着いたのが、日本特有の香辛料「わさび」でした。
わさびに含まれる辛味成分「アリルイソチオシアネート」は、鼻の粘膜を強く刺激し、痛みにも似た感覚を引き起こします。実験の結果、この成分を空気中に噴霧すると、深い眠りにある人でも数分以内に目を覚ますことが確認されました。しかも、涙が出るほどの刺激でありながら、人体に害はありません。
この研究成果は実際に製品化され、聴覚障害者向けの火災報知器として多くの施設に導入されています。「イグノーベル賞は笑える研究」と思われがちですが、この研究は多くの命を救う可能性を秘めた、真に実用的な発明なのです。